変化2 感覚野と運動野の結合ミス

 長期的に繰り返し手を使用すると、感覚情報を収集するニューロンの端末と大脳皮質の各領域とのつながりや、大脳皮質の運動野、感覚野、聴覚野の機能的組織化に変化が生じる。楽器演奏の知覚を司り、動作を命令する皮質ニューロンの数が変化するためで、演奏に熟達していくためには必要で正常な過程だ。
 しかし、この適応過程は、音楽家にとっては最大の効果を挙げた時点では停止せず、一本の指の感覚を司る大脳皮質が、ほかの指の感覚を司る皮質野と最終的に重なってしまい、有益な過程が結果的に不適応的過程になってしまうことがある。
 隣接する2本の指の皮膚を同時に反復刺激すると、大脳皮質内の各領域が融合して区別がなくなり、互いに重複することがわかっている。ほぼ同時の指の動作を伴い、反復的で広範囲にわたり、正確で意図的で動きが早く、負担のかかる訓練は、2つの刺激を個別に認識する脳の能力を超えてしまい、最終的に大脳皮質の機能局在を揺るがしてしまう可能性があるというのだ。
 感覚系の変化は運動パターンを変更させ、最後にはこの変更が感覚系組織を新たに変化させるという理解が成り立つ。