感覚運動再帰訓練

 カンディアが開発した感覚運動再帰訓練(SMR)は、感覚系と運動系を再構築し、そのバランスの再調整を目指すもの。ジストニアを発症している手の代償指(患指の代償動作として代償性伸展や随伴性屈曲が現れる指)にスプリント(関節補正具)を一つまたは複数取り付けることで、その動きを制限し、深部位置感覚の変更を行う。この訓練で特定の指の配置が身につき、固定してない指での演奏動作がより楽になり、演奏中に固定した指の配置を意識することができる。
 その後、徐々にスプリントを使わないでの楽器演奏訓練を増やし、新たに獲得した動作をクライアント自身で行えるようにしていく。到達レベルに応じて動作を行う速さや難易度の調節がある。
 テラッサ研究所が118人を対象に実施したこの訓練法では、治療期間は9カ月から24カ月。平均15カ月で、受診者の39%が完全復帰、44%が80%以上の回復をみたという。また17%が80%以下の回復、あるいは途中から治療を脱落した。
 同研究所は、この神経リハビリテーション手法について、症状の重症度やジストニアの進行期間に左右されないこと、受診者の83%が演奏活動に復帰し、約4割には完全回復が認められた成果を評価している。一方、訓練末期の変化がわかりにくくなってくる時期の疲労感から、治療を止めてしまうケースがあるなどの短所を指摘する。