2011-05-02 ボタン 玄関を開けると、モンペに地下足袋の見知らぬおばさんが 立っていた。 「おひとつ、どうですか?」 背中の背負い籠を下ろしながら、籠の中に目をやった。 ボタンの小さな苗がいくつも入っていた。 50年前のその時のやり取りを、今でも覚えている。 私はまだ小学生だった。 そのとき竹籠から出した苗のひとつが、このボタンで、 ほとんど手をかけないのに、毎年5月になると、つぼみが色づき、 あの時の記憶を蘇らせてくれる。