空間の感覚


水戸芸術館の「からだと動き」のワークショップに参加した。
講師は同館ACM劇場で専属舞踊家をしていた平松み紀さん。


レッスンの中にキューブの仮想空間に入って自分の名前をタッチする、というワークがあった。
床に縦横90センチの四角形になるように、四隅と辺の真ん中、そして四角形の中央にそれぞれ印のテープを貼る。
そこから前後左右にイメージの面を立ち上げる。片腕を上に伸ばした高さに床と対応した上側の面を想定し、箱が完成。
キューブの真ん中に立って向かい合っている面の左上隅に、アルファベットのaをポイントする。続いて右に移動し辺の真ん中、自分の正面上方にbを、右隅にcを。
そこから左斜め下に戻り、aが上隅にある縦の辺の真ん中、ちょうどおへその高さにd点を。そこから右に水平移動して正面にe,右端にf。
aとdを結んだ縦の辺が床と接する点がg、というように、右方向移動でアルファベット26文字を前後左右、上下の各面に仮想ポイントする。


そこから、私はキューブの中に入り、真ん中に立って、パソコンのキーボードを打つように、空間の中のアルファベットにリーチングして、自分の名前をつむぎだす。
例えば頭上の面の真ん中にあるyに触れてから、正面左上隅のaにリーチすると、yaで「ヤ」となるという具合。
ポイントする点を目で見る、ちゃんと触れるということ以外には、身体のどこで(指先、拳、ひじ、肩、頭、お尻、足etc)触れようと、どの位置から触れようと自由だ。
位置、方向、何をリーチする、どんな動きでつなぐ、などさまざまな選択肢を設けて試行したら、選び、決断する。動きの形を完成させる。
狭いキューブの中で自分の名前をタイプする動きが、そのままダンスの動きにつながっていく。


平松さんはいう。
「先生と生徒という関係で動きを学んだり、鏡の自分と向き合って…では、空間の感覚に目が向かない」


フェルデンクライス・メソッドのATMレッスンで、先生が動きの形を示さない理由も、あるいはこんなところにあるのかも。