ジストニアの原因1 脳の可塑性

 楽器の演奏には膨大な運動と感覚訓練が必要だ。通常幼少期から始められる訓練の結果、脳の再構成が行われ、未使用の神経結合が急速に活性化し、新しい神経結合が作り上げられる。こうした神経系の再構成と再適応の能力は、大脳の可塑性によるもので、それにより様々な神経同士の結合や、新しい神経結合を作り出すことが可能となる。
 こうした変化により、ピアニストが指を複雑に動かすときに使う神経の数は、訓練をしていない人の同じ動作に比べ、数が少ないことが知られている。集中的に手の訓練をしている音楽家は、指に対応する大脳の感覚野が拡大し、小脳は5%大きく発達。両手の協調的動作と、異なった動作とを同時に行うことを可能にしている。
 この変化は、卓越した演奏を行うためには不可欠なもの。ところが、再構成を可能にするほどの柔軟性をもつ神経系だからこそ、好ましくない変化を引き起こして病気につながる危険性もある。音楽家ジストニアは、このような不適切な変化の一例だという。