デカルトとアラン

 フランスの哲学者アランの父は、読書家で腕利きの獣医。母はカフェを
切り盛りする身体の丈夫な人で、息子アランも、写真で見る限り丈夫な身体
の持ち主でした。冬の燃料に、斧を振り下ろして薪作りに専念する姿をイメージしたいところですが、実際はどうだったでしょう。
 自身と身体の動きの働きについての向き合い方は、モーシェとはかなり異なっていたようです。
 Yokohama1の3年目あたりで紹介された図書に、アントニオ・R・ダマシオの『デカルトの誤り』(邦訳「生存する脳」)が。4年目には、ダイナミックシステム・ムーブメント理論(システムを構成する要素の間の相互関係)の紹介がありました。
 デカルトの誤りとは、その身体論の特徴が、心と身体の間に相反的な関係を設定したところだとされました。
 アランは、デカルトの身体論に影響を受けながら、身体が正しい方向に動き、能動的・活動的になっていくと、精神のほうもプラスのほうに傾いて、能動的・活動的になっていくと考え、心と身体はお互いが相関関係にあると主張しています。
 モーシェは、身体の動きの質を知覚との関係で探索しましたが、アランは情感的な質を、知覚から生れるものとして情念論を再構築した、といわれます。