佐藤忠良の触覚


「群馬の人」

「帽子・夏」


仙台出身の彫刻家、佐藤忠良さんを知ったのは、1970年代の「帽子
シリーズ」からで、2枚目の写真「帽子・夏」が最初だった。
その忠良さんが3月30日、亡くなられた。

私の父と同様、戦後のシベリア抑留を経験し、帰国後取り組んだ
のは、理想化や普遍化された肉体ではない、現実に目の前にいる
日本人の生だった。
 
忠良さんの名が知られるきっかけとなった1枚目の写真「群馬の人」
は、「日本人固有の体質を表現した秀作」と評された。

読売の編集委員・芥川喜好さんが、忠良さんの言葉を引用している。


「彫刻なんて、先祖が腰ミノひとつでやってたころと何も変らない。
木を彫り、石をたたき、粘土をひねってこつこつやってきたんです。
コンピューターも関係ない。人間が生物として持っている触覚感が
すべてです」(4.30付)